大和言葉で「死」はどう表す?死にまつわる表現をまとめました
ヤフー知恵袋に、「死」を表す大和言葉について、以下のような質問がありました。
結論からお答えすると、「死」を表す大和言葉は存在しています。間接的に「死」を意味する表現も多いため、この記事で紹介していきます。
スポンサーリンク
死を表す上代文学における大和言葉
「上代文学」とは、『万葉集』などに代表される日本の太古から奈良時代までの文学のことを指します。
ここでは、『上代文学に表された「死」のとらえ方についての考察』(加藤明|2010年)の論文から、死にまつわる7つの単語を引用して紹介します。
①死ぬ ②隠る ③隠る(こもる) ④神上がる ⑤神避る(かむさる) (⑥失す(うす))⑦身罷る(みまかる)
『上代文学に表された「死」のとらえ方についての考察』(加藤明|2010年)
①死ぬ
最も一般的な「死」を表す大和言葉です。
「息往ぬ(しいぬ)」が語源となっているという説があります。
「死」という言葉は忌み言葉であり、しばしば「し」という響きを避けることがありますが、万葉集には「死ぬ」という言葉がそのまま使われている歌も掲載されています。
朝霧(ぎり)のおほに相見し人ゆゑに命(いのち)死ぬべく恋ひわたるかも
万葉集入門 WEBサイトより引用
②隠る
「隠る」はもともと、人の姿が見えなくなることを指した言葉ですが、目上の人の死を間接的に表現するようにもなりました。
現代においても、天皇陛下に対しては「お隠れになる」という表現が使われることがあります。
ちなみに、崩御(ほうぎょ)という言葉の方が使われることが多いですが、これは大和言葉ではありません。
③隠る(こもる)
「こもる」という言葉には、直接的に「死」を表す意味はありません。
ただ、先ほど紹介した論文では、神話において「死」を表現する言葉として「こもる」が使われていたのではないか、という考察がされています。
「天照大御神が岩戸に隠れてしまう」という神話は有名ですが、この岩戸に「隠れてこもっていた」状態を、「一時的に死んでいた」可能性があると論じています。
死を意味する「隠る」と同じ漢字を用いているため、「隠る(こもる)」にも、死の意味が含まれていても、不思議ではありませんね。
④神上がる
「神上がる」は、神様が天界に上がるという意味の言葉ですが、それが転じて高貴な人の死を意味するようにもなりました。
古事記には「崩」という字に対して「かむあがる」という読みを当てており、現在の「崩御」という言葉にもつながることが分かります。
⑤神避る(かむさる)
「神避る」は、神となってこの世から去るという意味の言葉です。
高貴な人が亡くなることを意味するため、「神上がる」とほとんど同じと言えます。
『古事記』『日本書紀』では、「神上がる」ではなく「神避る」の表現が使われている場面もあるようです。
⑥失す(うす)
「失す」は、消えてなくなるという意味が転じて「死」を意味するようになりました。
ただ、先ほどの論文では『古事記』『万葉集』などの上代文学において「死」の意味で「失す」が使われている例が見当たらないため、古代から「死」を意味していたかは不明であると論じています。
⑦身罷る(みまかる)
「身罷る」は、現世からあの世へ行く、つまり「死ぬ」ということを意味している言葉です。
「罷る(まかる)」は謙譲的な意味合いがあると論文では解説されています。
大河ドラマにおいて、登場人物が亡くなった際に「〇〇が身罷ったか」などというセリフが使われています。
スポンサーリンク
死にまつわる大和言葉にはさまざまな表現がある
先ほどの『上代文学に表された「死」のとらえ方についての考察』(加藤明|2010年)の論文では取り上げられなかったものの、「死」を意味するほかの大和言葉についても紹介します。
- 果てる
- くだばる
- 天に召す
- 儚くなる
- 息絶える
- 亡くなる
- 逝く
これらの表現は、現代で暮らす私たちにとっても、「死」を表す言葉だと認識できる表現ですね。
(儚くなる、は少し馴染みがないかもしれませんが・・)
ここまで見てきたように、死を表す大和言葉は、表現の幅が多岐にわたります。
さまざまな表現について知っておくことで、場面に応じた適切な言葉選びができるようになり、あなたの品格をより高めてくれることでしょう。
当サイト「大和言葉なび」では、他にも実生活に取り入れたいたくさんの大和言葉を紹介しています。
大和言葉を一覧にしたデータベースも用意しているので、この機会にぜひ活用していただき、言葉遣いや教養を高めてみてはいかがでしょうか?
うまく大和言葉を取り入れることで、職場においてもあなたの品格・印象がアップすること間違いなしです。