大和言葉の花の名前|人名や語源について
大和言葉は、日本の風土や歴史を反映した美しい表現に満ちており、その言葉の中には季節や自然に対する深い感受性が込められています。
その響きや意味は美しく、優雅さを連想させることから、人名としても広く使われています。
この記事では、大和言葉の花の名前やその意味について深く掘り下げ、その魅力をご紹介します。
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目次
大和言葉の花の名前を使った人名
菖蒲(あやめ)
あやめは夏から秋にかけて青紫色の花を咲かせます。
日本の季節や風土に深い意味があり、古来から多くの詩や歌に登場し、季節の移り変わりや美しい風景を表現するための象徴として愛されています。
主に女の子の名前として人気を誇ります。
「菖蒲(あやめ)」の人名の例
- 彩芽
- 彩姫
- 紋芽
菊(きく)
菊は主に、秋の時期に黄色や白色を中心とした色合いの花を咲かせます。
その美しい花姿や季節感のある咲き方から、日本の文化や風習において重要な位置を占めています。
日本の国家でもあり、皇室や公家の家紋としても使われています。
主に女の子の名前に使われ、清楚で真面目な印象を与えてくれます。
「菊(きく)」の人名の例
- 菊花(きっか)
- 菊莉(きくり)
- 菊代(きくよ)
桜(さくら)
桜は日本を代表する花のひとつであり、その美しさには誰もが魅了されます。
特に春を象徴する花として親しまれ、桜の開花を待ちわびる「桜前線」や、花見の風習など、日本の文化や風習に深く根ざしています。
また、桜は日本の国花としても知られ、国の象徴として大切にされています。
その美しさと歴史的な意味から、桜は主に女の子の名前としても使われます。
由緒正しく、かつ身も心も美しい印象を与えてくれる名前として、多くの人々に愛されています。
「桜(さくら)」の人名の例
- 桜
- さくら
- 櫻
- 咲良
サツキ(さつき)
サツキは「5月(皐月)」が語源と言われるように、五月ころに花を咲かせます。
日本の文化では、さつきの花は古くから潔白や貞操の象徴とされ、歌や文学にも登場します。
また、伝統的な庭園や茶室の装飾にも用いられ、美しい風景を演出します。
女の子の名前に使われることが多く、、清楚・優雅で気品を持ち合わせている印象を与えます。
「サツキ(さつき)」の人名の例
- 皐月
- 紗月
- 沙津希
椿(つばき)
椿は日本の伝統的な花であり、古典文学や詩歌にも頻繁に登場し、美しい花を象徴しています。
一般的には女性の名前として使用され、優雅で上品、清楚な印象を与えることが多いです。
寒い冬にも花を咲かせる数少ない植物であり、高貴さな印象も併せ持ちます。
「椿(つばき)」の人名の例
- 椿季
- 椿姫
- 椿妃
柊(ひいらぎ)
柊は目立たない小さな白い花を咲かせ、実が赤く熟すことがあります。
日本の文化や風習にも深く関わっており、新年や年末の飾り付けに使われることがあります。
人名に使われると、品格や強さを印象づけ、古典的な響きや和風の雰囲気も感じられることがあります。
「柊(しゅう)」という男の子の名前も人気です。
「柊(ひいらぎ)」の人名の例
- 柊斗(しゅうと)
- 柊弥(しゅうや)
- 柊平(しゅうへい)
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藤(ふじ)
藤は春から初夏にかけて、つるを伸ばした藤の木が美しい花を咲かせ、見る人を魅了します。
藤の花は一般的には長い穂状の房にたくさんの小さな花が集まって咲き、その花の形状や美しさから、日本の伝統的な美意識に深く根ざした花として親しまれています。
また、藤の香りも独特で、爽やかな春の季節を彩ります。
人名に使うと、品格や清らかさ・美しさを連想させます。
「藤(ふじ)」の人名の例
- 藤歌(ふじか)
- 藤花(とうか)
- 藤子(とうこ)
以上、大和言葉の花の名前で、人名としても人気のあるものでした。
「子どもに大和言葉の名前を付けたい」とお考えの方は、花の名前以外も網羅的に含めたこちらの記事も、ぜひご参照ください。
大和言葉の花の名前と語源
大和言葉の花の名前と、その語源についてご紹介します。
身近な花から、「そんな花があるの?」という聞きなれない名前のものまで、幅広く取り上げます。
紫陽花(あじさい)
紫陽花は万葉集にも登場する歴史ある花です。
語源については諸説ありますが、有力なものとして「集真藍(あずさあい)」がなまって「あじさい」になったという説があります。
「紫陽花」という漢字表記に対する「あじさい」という読み方は単なる当て字であり、「蒲公英(たんぽぽ)」なども同様です。
もともと中国にあった「紫陽花」は違う種類の花を指していたが、日本に紫陽花の名前が入ってきたときに、日本の固有種である「あじさい」に漢字が結びついたとされています。
雨降り花(あめふりばな)
「雨降り花」とは、摘み取ると雨が降ると伝えられている花の総称で、主に梅雨の時期に咲く花が多いです。
この言い伝えは、その美しい花を摘むことで天候が変わるという風習や迷信に由来します。
主にホタルブクロやシロツメクサなどが雨降り花として知られていますが、地域によって異なる花が該当する場合もあります。
梅雨の時期には、これらの花が雨とともに美しく咲き誇り、日本の風物詩として親しまれています。
顔佳花(かおよばな)
顔佳花はカキツバタの別名で、「顔が良くて美しい花」という意味が込められています。
この意味が転じて「美人」であることを表すこともあります。
カキツバタは、アヤメ(菖蒲)に似た綺麗な花を咲かせることから、「いずれアヤメかカキツバタ」という慣用句も生まれました。
これは、優れているもの(美人)が複数存在し、どちらを選ぶか悩むという意味合いを持っています。
桜(さくら)
「さくら」という言葉の語源には諸説ありますが、その中の一部を紹介すると、「咲き麗(さきうれ)」が語源だという説があります。
この表現は日本の古典文学や雅楽、和歌などで使われる言葉であり、直訳すると「花が美しく咲くこと」を意味します。
美しい花が開花している様子を表現するもので、桜が麗らかに咲く花の代表として人々にとらえられていたのでしょう。
ちなみに「櫻」という漢字は「桜」の旧字体です。
貝の字は「貝の首飾り」を表していて、さくらんぼが成った桜の木を「首飾りを身に着けている女性」に例えたことから「櫻」が成立したと言われています。
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捨て子花(すてごばな)
「捨て子花」はヒガンバナの別名であり、他にも「死人花」など、いかにも演技の悪い名前が数多くついています。
これらの名前は、ヒガンバナが墓地に多く生えていたり、球根に毒があることに由来しています。
墓地などに多く生えているのは、自生していたのではなく、人々がモグラなどに墓地を荒らされないために植えたためと言われています。
また、ヒガンバナの球根を毒抜きすれば非常食にもなることから、子どもが引き抜いたりして台無しにならないように、あえて悪いイメージの名前が付けられたという説があります。
名前に反して、ヒガンバナは実際には人々からとても頼りにされていた植物だということが分かります。
椿(つばき)
「椿」の語源には諸説ありますが、
- 葉に艶があることから「津葉木」
- 葉が分厚いために「厚葉木」
など、椿の葉の特徴からつけられたとする説が有力です。
漢字の表記は異なりますが、「つばき」は古事記・日本書紀にも登場し、日本においても歴史ある植物です。
また、「玉椿(たまつばき)」という椿の美しさを強調した表現もあり、椿が古くから日本人に愛されてきたことが分かります。
椿は日本の風土や文化に深く根ざした植物であり、その美しさや風格が古来から賞賛されてきました。
十返りの花(とかえりのはな)
「十返りの花」は松の花を指す言葉です。
通常、松の花は松ぼっくりのような形をしており、一般的には「花」としての目立つ部分はありません。
しかし、特定の条件下で成熟した松の樹から葉の脇に小さな花が咲くことがあります。
「十返り」とは稀少なものが10年に1回程度しか現れないことを指す言葉であり、めったに咲くことがない松の花を表現するために使われるようになったとされています。
この表現は、松の花の珍しさや価値を強調するために用いられています。
都忘れ(みやこわすれ)
「都忘れ」という名前の植物は、菊に似た小さい可憐な花をつけ、特に紫色の花が人気を集めます。
江戸時代には茶花として栽培され、日本人に親しまれてきました。
その名前の由来は、鎌倉時代の承久の乱により島流しにされた順徳天皇が、都忘れの花に気づき「恋しい都も忘れられる花」と表現したことにあります。
このような歴史的背景からか、花言葉に「しばしの別れ」という悲しい意味を持っていることは興味深いですね。
嫁菜(よめな)
「嫁菜」は夏から秋にかけて白く美しい花を咲かせ、日本では古くから庭木として親しまれ、庭園や寺院などで見ることができます。
その語源は「美しい花」を「嫁」に例えたという説が有力で、他にも「女性が好んで摘んだ花だから」という説も。
嫁菜の花は香りがあり、日本の夏の風物詩の一つとして親しまれています。
そのため、庭園や神社などで風雅な雰囲気を演出するために植えられることが多いです。
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大和言葉の花の名前は美しい
以上、さまざまな大和言葉の花の名前を紹介してきました。
これらの花々は、古来の言葉や文化が息づいているだけでなく、日本人の心情や感性を象徴するものでもあります。
この記事を通して、日本の自然と言葉の美しさを感じていただけたことと思います。
この機会に、あなたの身近に大和言葉の花の名前を持つ人がいないか見渡してみてはいかがでしょうか?
その人に対する新たな印象を生まれるかもしれませんよ。