大和言葉と万葉仮名|文字は中国から取り入れたの?
古来の日本で使われてきた大和言葉と万葉仮名には、どのような関係があるのでしょうか?
大和言葉は日本人の古い話し言葉であり、万葉仮名は中国から取り入れた文字としての漢字です。
この記事では、この大和言葉と日本人が初めて手に入れた文字である万葉仮名の関係性についてご紹介します。
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大和言葉に文字(漢字)はなかった?
大和言葉は古来の日本人が ‘話し言葉’ として使ってきたコミュニケーションの手段です。
つまり、文字を持っていなかったので、すべての言葉が口伝えで残っているだけだったのです。
現代で暮らす私たちには想像できないことですよね?
歴史的な事実は、残された文献(文字)を解読することによって分かることが多いため、文字を持つ前の日本については、詳しい歴史が分からないのです。
日本が文字を使用し始めた経緯は、後述しますが、その最初の文献として有名なのが「万葉集」です。
万葉集は文字の登場によって作られたものであり、それまで口頭で伝えられてきたものを文字化することで、情報を記録できるようになったということですね。
ちなみに「文字」という言葉は、大和言葉では「あや」という表現が一番近いといえるでしょう。
大和言葉と万葉仮名の関係は?
万葉仮名は大和言葉に中国の漢字をあてたもの
話し言葉でしかなかった大和言葉は、文字として万葉仮名を使い始めたわけですが、この「万葉仮名」とはどういうものなのでしょうか?
簡単に表現すると、万葉仮名の見た目は漢字と同じです。
3世紀頃の邪馬台国の時代に中国から漢字が伝来にしたと言われていますが、この漢字を大和言葉にあてたものが万葉仮名です。
ここで興味深いのが、漢字はその「文字」だけでなく「音」も併せて日本に伝わってきたはずなのに、日本人は漢字の「文字」だけをメインに取り入れたということ。
漢字が持っている音を使わずに、自分たちが使っている大和言葉の音を当てたのです。
例えば、「かみなり」という大和言葉はもともと「神鳴り」の意味合いですが、中国語で「レイ」という読みを持っている「雷」の漢字に「かみなり」という音を当てました。
万葉仮名(漢字)だけで万葉集が作られた
万葉集が編纂された時代には、日本人が利用できる文字としては漢字である万葉仮名しか存在しませんでした。
そのため、万葉集はすべて万葉仮名(漢字)だけで構成されています。
万葉集を学校で習う際には、歌に漢字とひらがなが混在しているため、意外に思われるかもしれません。
しかし、これは学習しやすくするためにひらがなが使われていたのです。
万葉集に出てくる万葉仮名の具体的な例としては、以下のようなものがあります。
- 「余能奈可(よのなか)」
- 「宇米能波奈知流(うめのはなちる)」
一目見ただけでは単語を認識しにくいですが、読めないことはありませんね。
これらの例は、漢字一文字に対して一つの音が対応しているため、読み方を間違えることはほとんどありません。
万葉集に出てくる万葉仮名には、もっと複雑に表記されているものもあります。
この記事は「大和言葉と万葉仮名の関係性」を大まかにご紹介することが目的ですので、万葉仮名についての詳細は他の情報源をご参照いただくことをお勧めします。
先ほどの例に出てきた「余(よ)」について深堀りすると、「よ」は音読みです。
この「よ」という音は「余る」のような意味を含んでいないため、「表音文字」と呼ばれます。
万葉仮名はおおむね、「音読み」すると表音文字、「訓読み」すると表意文字、というふうに理解していただいていいでしょう。
『齋藤孝のざっくり!万葉集』(2019年 祥伝社|齋藤孝 著)
ちなみに、ひらがなが作られたのは794年以降の平安時代であり、それ以前の数百年もの間、日本人は万葉仮名だけを文字として使用していたことになります。
この事実はとても興味深いことですね。
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大和言葉は万葉仮名(漢字)のおかげで進化した
古来の日本人は文字を持っていなかったために、大和言葉を使って口頭でコミュニケーションをとるしかありませんでした。
文字が登場する以前にも歌は存在していましたが、記録する手段がないために代々口伝えで伝えられることになり、それは相当な苦労を伴ったことでしょう。
しかし、日本人はついに中国から漢字を取り入れて万葉仮名を作り出し、その文化は大いに発展しました。
万葉集という歌集まで編纂することに成功したのです。
現代の私たちの文化が存在するのは、話し言葉である大和言葉だけではなく、万葉仮名(漢字)という文字を取り入れたおかげと言えます。
このような視点を持つと、万葉集を含む日本の古典文学もさらに味わい深く感じられるのではないでしょうか。