大和言葉にラ行で始まる単語はない|日本語の不思議

古来の日本から伝わる大和言葉には「ラ行」で始まる単語が存在しないという説が広く知られていますが、果たして本当でしょうか?
この記事では、日本語(大和言葉)の「ラ行」について詳しく掘り下げ、その起源や特徴、実際の使用例について考察していきます。
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大和言葉にラ行で始まる単語はない
驚くべきことに、大和言葉には「ラ行」で始まる単語は存在しません。
国語辞典を見ると、ラ行の単語数が極端に少ないことからも明らかです。
日本語では、ラ行音を頭にもつ言葉はきわめて少ない。新潮国語辞典てみると、ラを語頭にもつ言葉は、二二二九頁中、七一頁で三%強、他の行音に比べ、約三分の一にすぎない。
<中略>
『万葉集辞典』(佐々木信綱、平凡社)をみると、更に驚くことに、植物篇にはラを頭にもつ言葉は一語もなく、動物篇で二語にすぎない。
『日本語はどこから来たか』(2001年|津田元一郎 著)より
「時雨(しぐれ)」「ゆらゆら」のように、ラ行を含む単語はたくさんあります。
しかし、ラ行から始まる単語は見当たらないのです。
日本だけでなく、アジアの一部の地域ではラ行から始まる単語が見られない言語がいくつかあり、これらの言語がかつて同じルーツを持っていた可能性が考えられます。
大和言葉のようなラ行で始まる単語

大和言葉には「ラ行」で始まる単語がないと聞いて、「この単語はラ行で始まってるけど?」と気になった方も多いでしょう。
例えば「りす」や「りんご」など。
このように、身近な言葉の中には「ラ行」で始まるものが存在しますが、これらは大和言葉ではありません。
古来の日本から使われているように見える単語の多くは、実は漢語に由来しています。
日本語にずっと昔からあるように見えることばでも、漢語だったり外来語だったりするのです。
『やまとことば50音辞典』(2016年|高村史司 著)
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以下に、いくつかの「ラ行」で始まる単語の例を挙げてみます。
りく | 【陸】実は音読みで、中国語の「ルー」という読み方が変化したと推測される。 |
りす | 【栗鼠】「リッソ」などの読み方が変化して「りす」となった。 |
りん | 【凛】中国語で「リン」と発音するが、そのまま定着したと思われる。 |
りんご | 【林檎】「リンゴン」などの読み方が変化して「りんご」となった。 |
るり | 【瑠璃】宝石のラピスラズリのことで、サンスクリット語の「ベールーリヤ」という読み方からあてられた。 |
これらの単語は、日本語において広く使用されていますが、大和言葉ではなく漢語や外来語から取り入れられたのです。
大和言葉について取り扱う書籍によっては、「ラ行」で始まる単語を大和言葉として掲載しているものもあります。
当サイトでは、書籍に掲載されている単語・表現については、大和言葉として紹介している部分もあります。
※当サイトにおける大和言葉の定義は運営者情報のページに記載しております。
大和言葉のラ行の意味

大和言葉では「ラ行」の音は、様々な単語のなかに含まれており、以下の意味合いを表現します。
- 輝き
- 栄光
- 栄え
- 利益
- 更新
(参考:『日本語はどこから来たか』(2001年|津田元一郎 著))
ラ行はその語感の美しさから、他の50音と組み合わせてさまざまなオノマトペを創り出します。
特に、「きらきら」「めらめら」などを想像すると、上記の意味合いがより鮮明に浮かび上がるのではないでしょうか?
ラ行は「さらさら」「ひらひら」など、日常のさまざまな音や動きを生き生きと表現するために活用されているのです。
その響きは、言葉の持つ魅力を一層引き立て、豊かな表現力を与えています。
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ラ行で始まる単語は大和言葉ではない

以上のことから、「ラ行」で始まる単語は古来の日本には存在せず、大和言葉では「ラ行」は単語の途中や最後に含まれるのみだと言うことがお分かりいただけたかと思います。
「りんご」や「りす」などの言葉が実は漢語からできていたことは、意外に感じたかもしれません。
この機会に、身近にある「ラ行」で始まる単語に目を向けてはいかがでしょうか?
その語源について調べると新たな発見があり、日常生活をより豊かにしてくれるでしょう。